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    徳次はすつかり感心したとも、又その反対ともとれる云ひ方だつた。

    例の伯父はもう大分前から房一の気を引いてみてはいたのだが、遠縁にあたる退職官吏の娘で盛子といふのを房一の妻として撰んで待ち設けていた。

    房一が云ひかけると

    それは言葉にするとこんな風なものであつた。

    「うむ」

    「そうしてそのお松と言う女は?」

    「さうかよ。おれは又、河原町を通るんだとばつかり思つた」

    「まあ、葉書でざつと町内に出しときましたがね」

    とにかく快適に入っていられるのだから、体温よりちょッと高い目の三十七八度ぐらいだろうときめていたが、温度計を買ってきて測ってみたら、三十四度五分であった。もっとも、私の平熱は三十五度である。胃に冷感をうけるのは、やっぱり体温よりも低いせいだな、という当然なことが、その時になって、はじめて納得できた始末だが、体温と同じ水温なら入浴は快適だという結論も得たのである。

    その塗りの色の落ちついた外まはりの築地塀、よく拭きこまれた廊下、塵一つ落ちていない部屋々々、渋い雅致のある床の置物だの掛軸、これらすべての上に現れているどこか神経質でさへあるよい趣味と堅固さ――さういふ外見にかかはらず、大石医院では年来をかしなごたごたが繰り返されていた。

    「あ、お帰んなさい」

    御大典とそれにつゞく奉祝日は瞬またゝくまに過ぎ去つた。

    とにかく、それは遠い向ふで起つていることだつた。対岸の火事を見物するやうなものだつた。

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